俺の視線に気づいた沙雪が、いきなり距離を詰めてきた!?

「じ~~~っ!」


 沙雪が俺の顔を覗き込んでいる。
 強気がそのまま顔に表れているような目元と、きりりと閉じた口元。
 小さく整った顔立ちに、不覚にも見惚れてしまった。


「そんなに見つめられると照れるなぁ……おにいさん」


「はっ! 誰がお前なんかに……」



「沙雪みたいな女の子、嫌いですか?」


 強気な沙雪の顔が急に弱気な雰囲気に変わった。
 その表情の落差に、思わず胸が高鳴る。


「すす、好きも嫌いも……こんな状態で何が言える!」



「えー、なにそれ……嘘でも好きっていうのが礼儀でしょう?」


 今度はまた口を尖らせ、すねたような表情をする。

 どれがこいつの本当の顔なのか……まだわからない。


「沙雪はまだまだ勉強中ですけど、いつか沙織様みたいなくノ一になりたいんです!」


「それは……やめとけ」


「……!?」


 その理由については詳しく説明せず、お茶を濁した。
 弟子なら師匠を目指すのが当然の流れとはいえ、放っておいても沙雪は師匠そっくりになりそうだ。
 この短いやり取りの中でも、すでに沙織の生き写しのような面が伺える。



「あのな、沙雪……」

「沙雪ちゃんでしょ! おにいさん?」

「お、おうっ」



 なぜか沙雪は不機嫌になってしまった。
 とても感情的と言うか……ものすごく扱いにくい女子だ。


「くノ一なら、おにいさん程度の人を手玉に取れないといけませんよね?」


「なんだと!?」


 ふざけやがって!
 おにいさん「程度」ときたか。
 こんな小娘に……だいぶ舐められたものだ。



「怒らない怒らない♪ くすっ……そろそろ気持ち良くしてあげるね?」


 むっとした表情の俺を見ながら、沙雪は小さく舌を出す。
 そして細い身体が俺の上にのしかかってきた。


「うぐっ!」





 思った以上に沙雪の身体は軽く感じる。
 ひんやりした手が俺の肩にかかる。



「おにいさんには沙雪のことを好きになって欲しいの……」


「えっ……」



 少女特有の甘ったるい声が耳に絡みつく。
 沙雪は、さっきまでとは違う雰囲気をかもし出していた。



「まっ、待て沙雪……」


「おにいさぁん……」


 沙織がいたときとは違う……まるで想い人を見るような目で俺を見つめている。


「甘えさせて……?」



 猫のように切れ上がった大きな目と、さらさらした沙雪の髪が……ゆっくりと近づいてくる。
 甘酸っぱい汗の香りが広がって、俺を包み込む……。



「やめろ……こっちに来るな!」


 こっ、こんなに小さいくせに! 生意気にも、すでに妖しげな色香を滲ませてやがる。
 この時、忘れかけていた大事なことを俺は思い出した。
 目の前の少女、沙雪はすでに「くノ一」なのだ。
 隙を見せたら一気に惑わされてしまう存在なのだ……

「ねえ、お願い……」




 こっ、こんなに小さいくせに!
 生意気にも、すでに妖しげな色香を滲ませてやがる。



「沙雪の目を見て? おにいさん」


「うっ……」





 細い指先が俺の顔をはさむ。
 まっすぐな沙雪の視線を受けて、俺は何も言い返せない。



「きれいでしょ……」



 目の奥を射抜くような沙雪の視線と、頬にかかる吐息が熱い。


(馬鹿な! 見つめられただけで……!?)


 身体が動か……ない!
 さらに不覚にも身体の芯が熱くなりだした。


(末恐ろしい娘だ……)


 直感的にそう思わざるを得ない。
 この少女が数年後、沙織と同い年になるころには男を惑わす美麗なくノ一になっていることだろう。


「おにいさんは、これから沙雪にいっぱい触られちゃうんですよ?」


 つつつ……


 俺の頬に添えられていた指が、ゆっくりと顎の先をすべり、首筋をくすぐってきた。


「はううっ!」


「このたくましい身体を私みたいな女の子に……好きにされちゃうんです」



「うぅぅ、気安く触るな……!」



 落ち着くことを知らない少女の指先は、そのまま胸元まで降りてきた。
 今度は乳首を下からそっと撫で上げるような手つきに変化した。
 同時に頬に残る指先が俺の耳を撫でる。


「くううぅぅっ!」

「小さなくノ一の指技……その身体に刻んであげる」

「はっ、はなれろおぉぉっ!」



 沙雪はさらに顔を寄せてきた。
 少女の香りが一層強くなる。
 鼻先があたるほどの距離で、沙雪が俺に尋ねてくる。


「感じやすいところを教えてもらえますか?」


「だれ……が! そんなことっ」



 可愛くねだるような仕草……特に沙雪の上目遣いには負けてしまいそうになる。



「ねえ、お願い……教えて? おにいさぁん」


 弱々しく拒む俺を見て、唇の端を吊り上げる。
 胸元を這う指先が、脇の下へと移動する。
 手足を縛られ身動きの取れない俺に対して、自らの優位を示すように……。



「こ……断るっ」


「うふふっ、やっぱり駄目?」



「あああぁぁっ! さ、さわる……なぁ!!」



 沙雪に甘く囁かれ、身体中を触られる……たったそれだけなのに、今までに無いほど肉棒が張り詰めてしまった。



「沙雪に教えてくれないんだぁ……」


「くふっ……」



 その時、沙雪の声質が変わった。



「じゃあ……身体中触って、全部感じさせちゃう」



 さっきまで身体の表面をゆっくりなぞっていた指先の動きも変わる。
 優しく撫でるような指が、今は俺の身体に対して垂直につきたてられている。


ずぷっ!



「ん……んああぁぁ!」



「くすっ、すごい声ですねぇ」


 沙雪の指は細い。
 その分、少ない力で俺の身体に指を深く突き刺せるのだ。


「まだおにいさんの大事なところには触れてないのに……」


くいっ……


 わざとなのか……
 意識しているのかどうかはわからない。
 しかし沙雪の指先がえぐる場所によって、妖しい快感が俺の身体を駆け巡る。


「くそっ……沙雪、やめろぉぉ!」



「沙織様から聞いてますよ、おにいさん」


「なにっ……はあぁぁ!?」



「わきの下とか太ももとか……大好きなんですよね?」


「……!」


 拷問相手に自らの弱点をさらす馬鹿などいるものか。
 俺は目を伏せた。
 自分の指先で悶える獲物を楽しげに見つめながら、沙雪は目を光らせた。


「何も言わない気ですね?」


「……」


「別にいいです。いっぱい触っちゃう……」


 細い指先が身体から離れる。

 だがすぐに、別の箇所に沙雪の手が添えられる。

 小さな両手が俺を抱きしめるように、脇の下に添えられた。

さわさわさわさわ……


「……うっ!」



「ここは平気なの? おにいさん」


 沙雪の指が素早く這い回る。
 身体中に蜘蛛の子が群がってくるような……異常なくすぐったさ。
 まるで毛が逆立つ思いだった。

 ほんの少しの間、俺は何も感じない振りをしていたが……




「ふあっ……!
 そこは! やめっ、あああぁぁぁぁ~~~!!」

「あはっ、やっぱりここなんだぁ!」


 弱点を見抜いた沙雪は、得意そうな顔で俺を見下している。
 さらに激しく指先が動き、俺の身体がこわばる。


くしゅくしゅくしゅっ!


「わかりやすくていいなぁ、おにいさん」





「ああっ、ああぁぁぁぁ! やめええええ!」


 堪えきれずに声を上げてしまう。
 笑いたくもないのに、無理やり笑わされる屈辱。
 なぜこんな目に……しかも相手は俺より年下の少女だ。
 得体の知れない情けなさに、俺は不覚にも涙を浮かべた。

「おにいさん、泣いちゃってる! きゃははっ」


「はひっ、はぁ、はぁ……」


「本当は、お耳とかも感じちゃうんじゃないですかぁ?」


 わき腹を責め立てる手の動きが止まり、再び頬に添えられる。

 無理やり俺の顔を正面に向かせる沙雪と目が合った瞬間、細い指が俺の身体を……


「ほぉら、こちょこちょこちょ~~」


「あひいいいぃぃぃ!!」


 すっかり熱くなって、敏感になった俺の耳元をくすぐりだす沙雪。
 指先の動きは先ほどよりもなめらかになり、残酷なほど身体中に快感を植えつけてくる。

 感じやすい部分だけをしつこく責めたてる沙雪の性技は、当たり前のように俺を悶えさせる。



「ふ~ん……」


 俺の感じる部分を探りながら、沙雪は俺を責め続ける。


「きゃははははっ、おにいさんの身体って感じやすくて最高ですねぇ」



 ひとしきり俺をくすぐった後、沙雪はぐったりする俺の身体を解放した。
 くすぐり地獄は終わったようだ……。








「じゃあそろそろ本気出してあげる……」


「な……に?」


「感じやすいおにいさんの身体……沙雪がもっと丁寧に責めてあげます」


 沙雪は印を結び、目を閉じて精神を集中し始めた。
 なにやら不吉な予感がする……!

 俺の視界が歪む。
 まるで霞がかかったように沙雪の身体も歪む。


「馬鹿な……」


 俺の目の前で沙雪の身体が増えた!
 驚く間もなく、片方の沙雪が俺にのしかかってきた。

「うふふっ、どうです? 驚きましたか?」


「これが『二輪車』の術!」






「今から二人がかりでいじめてあげますね!」



 沙雪のうち一人が微笑んだ。

「私がおにいさんのお顔を担当します」


 両手で俺の顔を挟んで、冷たく微笑む沙雪。
 手のひらから体温を感じるし、こいつは幻影などではない。
 そうなるともう一人のほうが……


くちゅうっ!


「はううぅぅっ!」

「じゃあ私はおにいさんの大事なところ……担当しますね」

 突然、股間に快感が走る。
 すでに硬くなった肉棒が、少女の柔らかな手に包まれたのだ。


「そんな馬鹿な……!」


 どっちが幻なのか、これではわからない!


「二人がかりで責められちゃうなんて、考えてなかった?」



「こんなまやかしなどっ!」



 いつもの俺ならば、こんな術など少し精神を集中すれば打ち破れるのだが……。


「ああああぁぁぁっ!」



 身体にまとわり付く沙雪の肌の温もりが俺の邪魔をする!



「いいんですよ、考えなくても……ただ感じてくれればいいんです」

 沙雪が顔を寄せてくる。
 そして二人は同時に俺に向かって微笑んできた!


「じゃあ、いきますよ~~」



 俺の顔を包みこむように、沙雪の一人が顔を寄せてきた。


「おにいさん……舌、出してください……」


「い、いやだ……!」



「沙雪が優しくねぶってあげますからぁ」



 なかなか口を開かない俺に頬ずりしながら、沙雪は囁く。


(この誘惑に負けたら駄目だ……)


 頭ではわかっている。
 わかっているのだ……

「おにいさんにいっぱい口付けしたいの。だから、ね?」


「あ……」


 細い指先が俺の脇腹をなぞる。
 身体が徐々に緩んでいく。
 少女の誘惑に……逆らえない。



「んふふ♪ ぴちゅっ……」
「ほら、もっとちょうだい……」


わずかに開いた俺の口元に、沙雪の舌が滑り込んできた。


ちゅう……ちゅぴっ……



「ふぅっ……んむっ!」


ぴちゃぴちゃ……


 だめだ……沙雪の舌を追い返せない!

「はぁん、おにいさん、気持ちいいんですね? じゃあもっと…………はむっ……んん~」


「んんー!!」




 いったん顔を離してから、再び位置を決めて襲い掛かる沙雪。
 すでに主導権を少女に握られ、俺は焦りまくった。






「あんっ、動いちゃ駄目です~~」

 くノ一とは言え、少女相手にこんなに一方的な展開など予想していなかった……。
 だが沙雪は容赦なく、俺をさらに追い詰める。


「淫らなおつゆを全部舐め取っちゃう……」



「あふぅっ!!」


じゅぷううぅぅっ!!


 今度は下半身があああぁぁ!!


「沙雪の舌先、ざらざらしてるでしょ?」


(絡み付いて離れないいいいぃぃぃ!)



 股間に顔を沈めた沙雪が、熱心に肉棒をすすりあげる。
 生暖かい沙雪の口の中で、俺は溶かされていく……!


「あむっ、じゅぷ……ちゅっ……気持ちいい? おにいさん」




 こちらを見上げながら沙雪が肉棒をしごきあげた!



ぐちゅぐちゅぐちゅっ!


「あああぁ! やめろっ、沙雪いいぃぃ!!」


「ふああぁぁっ!」




 沙雪の猛攻に、思わず精を少し漏らしてしまった……。
 こらえようとした身体中から一気に汗が吹き出す。
 こんな幻術で……少女に犯されてしまうなんて!



「もうっ! 下の沙雪に夢中になっちゃ駄目です~!」


「ま、まってくれ……!」


 だがもちろん沙雪は待ってはくれない。



「おにいさんは私の目を見て? ずっと口付けしてあげますから……」




「ああぁ……!」




 言われるがままに沙雪と見詰め合う。
 吸い込まれそうな大きな眼で、俺の心を犯してくる。

 少女の目や唇が動くのをじっと見つめているだけで、心が緩んでいく……。


「うふふっ、
 そうです……もっとだらしないお顔になって?」

「や、やめてくれ……もう、おかしくなる!」


「とっくにおにいさんはおかしくなってますよ?」


「そんな……!」


 怯える俺を見て、沙雪が淫らに微笑む。



「沙雪に唇を吸われて嬉しくなっちゃう体にしてあげます」



 ちゅ……





 再び沙雪の唇が俺に重なると、身体中から力が抜けてしまった。


「上手でしょう? 沙雪のお口……んちゅっ♪」



 息がうまくできなくなるほど、沙雪に乱されてしまう。
 二人がかりの責めは俺に休む暇を与えてくれない。



「おちんちんもそろそろ降参ですね?」

「く、くそっ……」


 限界が近い。
 うまく抵抗することもできず、沙雪に追い込まれる。



「さっきよりも硬くなって、いっぱい泣いてる……」

くちゅっ……


「あがああぁぁ!」


「可愛いからもっといじめてあげます」



「あむっ……じゅるっ、ぷちゅうぅぅ~~」


 すっかり敏感になった亀頭を、さらに深く咥え込む沙雪。
 それを拒もうとしても沙雪の身体が邪魔で……!


「おにいさん、足が閉じられませんね? あははっ」


「あああぁぁっ、やばい! も、もう離して!」

「ほら、吸いますよ? ちゅううぅぅぅぅぅ~~~」

 気が遠くなるほどの吸引。
 肉棒の先から命が吸い出されそうになるほど……気持ちいい。

「あむっ、じゅぷ……
 ちゅっ……気持ちいい? おにいさん」



「あはっ、なんだかもう限界みたい」


「やめろ……もうっ……」

「だめです」

「最後は二人同時に激しくしてあげます」



 沙雪は俺の顔をもう一度優しく包み込む。

 もう一人のほうも、俺の足の間でしっかりと狙いを定めている。


「覚悟はいいですか? おにいさん」

「うああぁぁ……」

「うふふふっ、では……!」


 沙雪が顔を沈めた瞬間、俺の意識が弾けた。
 たっぷり焦らされた精が、一気に吹き出して身体を震わせる!

「んんっ、んんんんー!!」


どぴゅどぴゅどぴゅ~~~!!


「きゃはっ、出た~~」

 まったく堪えることなどできなかった……俺は沙雪の口の中で、思い切り果ててしまった。
 だが少女の責めは止まらない。


 くちゅくちゅくちゅくちゅうぅぅ!


「ひぐっ、ふああっ、やめろ! 今は触るなああぁぁ」


 達したばかりで苦しげにわななく肉棒を、沙雪は相変わらず巧みな手つきで弄ぶ。


「あはっ、なにそれ? 沙雪わかんないです」


 こ、こいつは絶対に知ってる……!
 今の俺を、果てたばかりの男を悶えさせる術を!


「もっといっぱい……棒の付け根を擦ってあげますね」


「やめろっ、それはあああぁぁ!」


「ほらっ、ころころしちゃう」


「あっ、あっ、あっ!!」


 沙雪の指先が容赦なく俺をいたぶる。

 振り払いたくても、悶える体力まで搾り取られた俺にはどうすることもできない。


「ぐあぁ……ああぁぁ」



「かわいいなぁ、おにいさん」



「も、もういいだろ……」



「まだしゃべれるんだ? その唇、犯してあげます……」



「あぁ……今度はああぁぁ!」



 上の沙雪の唇が俺に重なった瞬間、下半身にも痺れが広がる。



「んふふ♪ ぴちゅっ……」

「ほら、もっとちょうだい……」



 少女の唇の感触に、再び狂わされる。


(だめだ……本当におかしくなる)



 沙雪はしばらくの間、穏やかに俺を責め続けた。
 だが俺の身体の熱は冷めず、むしろ内部で何かがくすぶっていた。



「おにいさん……果てたあとに追い討ちをかけられると天国でしょう?」


 すでに布切れのように、くたくたになった俺の身体を優しく抱きかかえる沙雪。


「くっ……これのどこが天国なんだ!」


 俺が必死に抗議すると、沙雪はむっとした。



「あれ? まだ反抗的ですね」


ぐちゅうっ!


「うあっ」


 沙雪は俺を転がすと、再び肉棒に顔を寄せた。


「ひっ……!」



「もっと駄目にしてあげますよ、おにいさん」



「や、やめろっ! あ、あああぁぁ~~~」




 沙雪が亀頭を口に含むと、あっという間に身体の奥が疼きだした。

 だめだ……また!


「うあああぁぁ!」


「ほら、もう一度イって~~~!!」







 沙雪に言われるがままに俺は果てた。
 少女の技巧で無理やり勃たされた肉棒から、再び精が抜き取られていく……



「きゃはっ、イっちゃった!」


 無様に精を吐き出した俺に対して、沙雪は満面の笑みを浮かべながら追撃を加える。

ちゅううぅぅぅ~~~

「ひいいっ! うあああぁぁ!」


 敏感な部分に何度も重ねられる口づけ。
 細い指で根元をしごきながら亀頭に口を寄せ、吸い付き、何度も甘噛みされる。
 男を甘く痺れさせる沙雪の技に、不覚にもさらに精を遡らせてしまう。


「はぁっ、はぁっ……」


 息を切らせながら沙雪を見つめると、お互いに眼が合った。
 俺を先にイかせたことで修行前よりも自信に満ち溢れている。


「おにいさん、沙雪のしるし付けてあげるよ……」


「なっ……」


 沙雪がそっと顔を寄せてきた。
 精を抜き取られたせいもあり、なぜか気恥ずかしい。
 こんな小娘に…………
 眼を伏せた俺を見て、沙雪がくすっと笑う。


「あご、上げてくれる?」


 下を向く俺の顔を、沙雪が無理やり跳ね上げた。
 大きな瞳に見つめられる……


「おにいさん……♪」


「うっ……」


 まっすぐ見つめられ、鼓動が早くなる。
 沙雪は俺の顔を抱きしめ、頬ずりしてから耳を軽く噛んだ。


かぷっ……


「ひゃうっ!」


「うふふふ……」


 少女の髪と甘酸っぱい香りに包まれ、恍惚となる。
 そして首筋に唇を押し当て、強く吸い始める!



きゅうぅぅぅぅ~~~





「うああぁっ……!」


 いきなりやってきた軽い痛みに声を上げてしまう。
 沙雪の小さな唇が首筋に食い込んで……熱い。


「なにを…………んあっ!」


ちゅぱぁぁっ


 問いかけに答えるように沙雪が俺を開放した。
 しかし俺は動けない。
 精を抜き取られただけでなく、沙雪に軽く魅了されてしまったようだ……。

「これが三つになれば、おにいさんは沙雪のものだよ?」



 沙雪の指が俺の首筋をなぞる。


「くっ」


 沙雪がなぞった場所……
 さっき顔を沈めたその場所の痛みが取れない。
 痺れたまま熱くうずいている。


「ちゃんとお口にもしてあげるよ」




ちゅうぅぅ♪


 首筋と同じように沙雪が俺に口づけをしてきた。


(ああぁぁ……)



 力が抜けていく……
 少女は何度も俺の唇に吸い付き、淫らな音を立てまくる。




「かわいいなぁ、おにいさん」


 俺の両肩に手を置いたまま、沙雪は優しく俺を見つめていた。
 沙雪の口付けのせいで手足に力が入らない。


「ほらぁ、おにいさんは……眠くな~る眠くな~る」


「くうぅぅ……」


 悔しいが俺は沙雪に魅了されてしまった。
 こんな年下の小娘に翻弄されてしまうとは考えていなかった。
 そして沙雪に言われるがままに身体が鉛のように重くなって……きた……

「起きたらまた沙雪と遊ぼうね?」

 沙雪が俺に背を向ける。
 小さなくノ一に魅了されたまま、俺の意識は闇に溶けていった。


『二輪車』の術 編 (了)